世界のお粥を比べてみよう

世界のお粥を比較するイメージ。異なる見た目の粥料理を3種類並べた画像

米粒が残る? とろりとする? 朝食の粥と粥状料理の違い

タイには、朝に食べられている二つの米料理があります。ひとつはジョーク。米粒の形が分からなくなるほど、やわらかく煮るお粥です。もうひとつはカオトム。こちらは米粒を残して仕上げる、米入りのスープです。

どちらも「米を煮た朝ごはん」なのに、見た目も口当たりもかなり違います。ジョークとカオトムを並べてみると、ひとつ疑問が出てきます。同じ「お粥のような一杯」なのに、何が違うんだろう?

タイのジョーク。米粒が崩れるまでやわらかく煮た朝粥
ジョーク(タイ)|米粒が崩れるまでやわらかく煮る朝粥
タイのカオトム。米粒を残して仕上げた米入りスープ
カオトム(タイ)|米粒を残して仕上げる米入りスープ

そこで、世界の似た朝食をもう少し集めて比べてみることにしました。すると、違うのは米粒の残り方だけではありませんでした。そもそも米を使わないものがあり、塩味にも甘味にもなり、野菜やいもまで一緒に煮る料理もあります。

では、何が違えば、こんなに違う一杯になるのでしょう。

この記事では、トリシエタ掲載料理の中から、日本語で見ると「お粥のような一杯」に見える朝食を並べます。全部を同じ料理としてまとめるためではなく、似て見える一杯の違いを見るためです。

今回は、次の4つを「ものさし」にして見ていきます。

  • 何を煮ているのか
  • 粒をどこまで残すのか
  • どんな味にするのか
  • 何を一緒に煮、何をあとから合わせるのか

これは世界のお粥を4種類に分類する決まりではありません。料理の違いを見つけるための見方です。

まずは8品をざっと見てみよう

今回比べるのは、次の8品です。

料理国・地域主な原料注目する特徴
お茶がい(茶がゆ)日本・佐賀米茶汁で米を煮る
ジョーク(タイ粥)タイ米米粒が崩れるまで煮る
カオトムタイ米米粒を残す米入りスープ
甜沫中国・済南粟など塩味で具が入る
ティヌトゥアンインドネシア・マナド米など野菜やいもも一緒に煮る
ミンガウ・デ・ミーリョブラジルとうもろこし牛乳などで煮る粥状料理
スコティッシュ・ポリッジスコットランドオーツ麦甘味にも塩味にも
ベリラエジプト全粒小麦小麦粒を牛乳などと食べる

こうして並べると、まず気づくことがあります。

「お粥みたいな料理=米」とは限りません。

とうもろこし、オーツ麦、小麦など、土台になる穀物そのものが違う一杯もあります。ここから順番に見ていきましょう。

違い① お粥は米だけじゃない

まずは、米を煮る三つの料理

日本・佐賀のお茶がい(茶がゆ)は、番茶などで作った茶汁に米を入れて煮る料理です。タイのジョークも米を使いますが、こちらは米粒の形が分からなくなるほどやわらかく煮ます。同じタイのカオトムは逆に、米粒の形を残して仕上げます。

どれも「米を煮る」というところまでは同じ。でも、何で煮るのか、どこまで粒を残すのか。そこが変わるだけで、一杯の姿はかなり変わります。

米じゃない『お粥のような朝食』もある

ここから少し面白くなります。

中国・済南の甜沫(ティエンモー)では、粟などの穀物が使われます。スコットランドのポリッジはオーツ麦。ブラジルのミンガウ・デ・ミーリョは、とうもろこし。エジプトのベリラでは、全粒小麦をやわらかく煮て食べます。

見た目だけなら、どれも「穀物をやわらかく煮た一杯」。でも、中身を見れば土台から違います。

ブラジルのミンガウ・デ・ミーリョ。とうもろこしを使った黄色い粥状料理
ミンガウ・デ・ミーリョ(ブラジル)|とうもろこしを使う粥状料理

まず「何を煮ている?」と見るだけでも、お粥の世界はかなり広がります。

違い② 粒を残す? それとも崩す?

同じタイなのに、ジョークとカオトムはかなり違う

いちばん分かりやすいのが、最初に登場したジョークとカオトムです。ジョークは、米粒の形がほとんど分からなくなるまで煮ます。一方のカオトムは、スープの中に米粒が見える仕上がりです。

同じ国。同じ米。どちらも朝に食べられる一杯。

それでも、粒をどこまで残すかで見た目と口当たりが変わります。「お粥」とひとことで呼ぶと近く見えても、実際に並べるとかなり違います。

でも「粒が残る」だけでもまとめられない

エジプトのベリラにも、粒があります。ただし残っているのは米粒ではありません。小麦の粒そのものです。

さらに、インドネシア・マナドのティヌトゥアンは、米粒だけを見ても特徴をつかみきれません。とうもろこし、かぼちゃ、さつまいも、キャッサバ、葉野菜など、さまざまな材料が一緒になって一杯を作ります。

つまり、「粒があるか、ないか」の二択ではありません。

穀物の形が、一杯の中にどれくらい残って見えるのか。そう考える方が、それぞれの違いが見えやすくなります。

違い③ お粥は淡白とは限らない

「お粥」と聞くと、やさしい味や薄味を思い浮かべる人もいるかもしれません。でも、ここでも料理によってかなり違います。

「甜」なのに甘くない、甜沫

中国・済南の甜沫。

名前にある「甜」は、「甘い」という意味を持つ字です。

だったら甘いお粥を想像しそうですが、実際は塩味です。粟などの穀物に、ほうれん草、落花生、豆腐皮などを合わせ、しょうがやこしょうで風味をつけます。

中国・済南の甜沫。穀物にほうれん草、落花生、豆腐皮などを合わせた塩味の粥状料理
甜沫(中国・済南)|「甜」の字が入るものの、実際は塩味の一杯

名前だけから想像した味とは、かなり違う一杯です。なお、なぜ「甜」という字を使う名前になったのかは、今回確認した資料だけでは確定しません。

本当に甘い一杯もある

一方、ブラジルのミンガウ・デ・ミーリョには、とうもろこしを牛乳などで煮、砂糖で甘く仕上げる例があります。エジプトのベリラでも、やわらかく煮た全粒小麦を牛乳や砂糖などと食べます。

塩味の一杯もあれば、甘い一杯もある。使う穀物だけでなく、何を合わせるかでも印象は変わります。

ポリッジは「甘い朝食」とも言い切れない

スコットランドのポリッジは、オーツ麦を水や牛乳で煮て作ります。甘味を加えて食べることもありますが、塩味で食べる形もあります。

「ポリッジ=甘い朝食」と一つに決めることもできません。香辛料、乳製品、砂糖。何を加えるかで、同じ「穀物を煮た一杯」でも味の方向は変わっていきます。

違い④ 何を一緒に煮る? 何をあとから合わせる?

次は、一杯の中身を見てみましょう。

ジョークは、粥に具や薬味を合わせる

タイのジョークでは、やわらかく煮た米粥に、肉や卵、しょうが、ねぎなどを合わせて一杯にします。

やわらかな米粥が土台になり、その上に具や薬味が加わります。

ティヌトゥアンは、野菜やいもまで一緒に煮る

インドネシア・マナドのティヌトゥアンは、少し様子が違います。

米だけを粥にして、最後に野菜をのせる料理ではありません。とうもろこし、かぼちゃ、さつまいも、キャッサバ、葉野菜なども加えながら煮ます。

インドネシア・マナドのティヌトゥアン。野菜やいも類などを一緒に煮込んだ粥料理
ティヌトゥアン(インドネシア・マナド)|野菜やいもまで一緒に煮込む一杯

「お粥+野菜」ではなく、野菜やいもまで一杯そのものを作る材料。

日本のお粥を思い浮かべていると、かなり違って見える一杯です。

甜沫も「粟だけの粥」ではない

甜沫にも、ほうれん草、落花生、豆腐皮などが入ります。

こうして見ると、何を最後にのせるのか。何を最初から一緒に煮るのか。という違いも見えてきます。同じようなとろりとした一杯でも、「どう一杯を作っているか」は同じではありません。

では、どこまでを「お粥」と呼ぶ?

ここまで見てくると、別の疑問が出てきます。そもそも、どこまでを「お粥」と呼んでいいのでしょう。

日本語の「粥」は、一般には、米などの穀物を多めの水分でやわらかく煮たものとして説明されます。米だけでなく、粟や麦などを使うものもあります。

そう考えると、世界には「お粥に近い」と感じる料理がいくつもあります。
たとえば南インドのヴェン・ポンガル。米とムング豆をやわらかく炊き、黒こしょうやクミン、ギーで風味をつける塩味の料理です。
「ポンガル」という名も、タミル語の「煮る」「あふれる」に由来すると説明されています。

見た目も作り方もお粥に近く感じられますが、少なくともインド政府の観光情報では、「お粥の一種」と明記するのではなく、ヴェン・ポンガルという固有の料理名で紹介されています。

インドのヴェン・ポンガル。米と豆をやわらかく煮て仕上げた朝食料理
ヴェン・ポンガル(インド)|お粥に近く見えても、固有の料理名を持つ一皿

つまり、日本語ではお粥に近く見えても、現地では別の料理名と位置づけを持つことがあるということです。だから、世界の「お粥のような朝食」を見るときは、見た目だけでなく、材料や作り方、その土地でどう呼ばれているかまで見る必要があります。

4つの「ものさし」で見ると、違いが見えてくる

最初は、ジョークとカオトムの「粒が残るかどうか」から始まりました。でも8品を並べてみると、違いはそれだけではありませんでした。

何を煮ている? 米だけでなく、粟、オーツ麦、とうもろこし、小麦もあります。

粒をどこまで残す? ジョークのように崩す一杯もあれば、カオトムやベリラのように粒が見える料理もあります。

どんな味にする? 塩味、香辛料のきいた味、牛乳や砂糖を使った甘い味まであります。

何を一緒に入れる? 粥を土台に具を合わせる料理もあれば、ティヌトゥアンのように野菜やいもまで一緒に煮る料理もあります。同じように見える一杯でも、見る場所を少し変えるだけで違いが見えてきます。

同じ「お粥」から、違う朝食が見えてくる

最初に見たジョークとカオトムは、どちらも米が土台でした。でもそこから世界へ広げると、米ではない。甘い。香辛料がきいている。野菜やいもがたっぷり入る。そもそも「お粥」と呼んでいいのか迷う。そんな一杯まで出てきました。

「世界のお粥」と一つにまとめるより、似て見える一杯の中に、どんな違いがあるのかを見る。

その方が、料理一つひとつの面白さが見えてきます。

気になった一杯を見てみよう

世界の朝食をもっと大きく見渡すなら、「世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう」へ。

世界の朝食を主食・食材から紹介する読み物
世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう

米、パン、麺、卵、豆、とうもろこし、キャッサバなど、世界の朝食を主食・食材から見渡します。

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主な参考資料

  • 農林水産省「お茶がい/茶がゆ 佐賀県」
  • タイ国政府観光庁「タイの食文化」
  • 済南市政府「A Bite of Jinan」
  • インドネシア共和国観光省「Tinutuan Porridge」
  • バイーア州政府 調達情報(朝食献立例)
  • VisitScotland「Must-try Scottish food and drink」
  • Egyptian Journal of Food Science「Production of Functional Egyptian Bellila with Probiotic Strains」
  • Indian Heritage Centre「What’s in the Pot?」
  • インド政府観光省 UTSAV「Pongal Festival」
  • コトバンク「粥」(デジタル大辞泉/精選版 日本国語大辞典)

資料最終確認:2026年9月10日