カテゴリー: 読み物

  • 世界のお粥を比べてみよう

    世界のお粥を比べてみよう

    米粒が残る? とろりとする? 朝食の粥と粥状料理の違い

    タイには、朝に食べられている二つの米料理があります。ひとつはジョーク。米粒の形が分からなくなるほど、やわらかく煮るお粥です。もうひとつはカオトム。こちらは米粒を残して仕上げる、米入りのスープです。

    どちらも「米を煮た朝ごはん」なのに、見た目も口当たりもかなり違います。ジョークとカオトムを並べてみると、ひとつ疑問が出てきます。同じ「お粥のような一杯」なのに、何が違うんだろう?

    タイのジョーク。米粒が崩れるまでやわらかく煮た朝粥
    ジョーク(タイ)|米粒が崩れるまでやわらかく煮る朝粥
    タイのカオトム。米粒を残して仕上げた米入りスープ
    カオトム(タイ)|米粒を残して仕上げる米入りスープ

    そこで、世界の似た朝食をもう少し集めて比べてみることにしました。すると、違うのは米粒の残り方だけではありませんでした。そもそも米を使わないものがあり、塩味にも甘味にもなり、野菜やいもまで一緒に煮る料理もあります。

    では、何が違えば、こんなに違う一杯になるのでしょう。

    この記事では、トリシエタ掲載料理の中から、日本語で見ると「お粥のような一杯」に見える朝食を並べます。全部を同じ料理としてまとめるためではなく、似て見える一杯の違いを見るためです。

    今回は、次の4つを「ものさし」にして見ていきます。

    • 何を煮ているのか
    • 粒をどこまで残すのか
    • どんな味にするのか
    • 何を一緒に煮、何をあとから合わせるのか

    これは世界のお粥を4種類に分類する決まりではありません。料理の違いを見つけるための見方です。

    まずは8品をざっと見てみよう

    今回比べるのは、次の8品です。

    料理国・地域主な原料注目する特徴
    お茶がい(茶がゆ)日本・佐賀米茶汁で米を煮る
    ジョーク(タイ粥)タイ米米粒が崩れるまで煮る
    カオトムタイ米米粒を残す米入りスープ
    甜沫中国・済南粟など塩味で具が入る
    ティヌトゥアンインドネシア・マナド米など野菜やいもも一緒に煮る
    ミンガウ・デ・ミーリョブラジルとうもろこし牛乳などで煮る粥状料理
    スコティッシュ・ポリッジスコットランドオーツ麦甘味にも塩味にも
    ベリラエジプト全粒小麦小麦粒を牛乳などと食べる

    こうして並べると、まず気づくことがあります。

    「お粥みたいな料理=米」とは限りません。

    とうもろこし、オーツ麦、小麦など、土台になる穀物そのものが違う一杯もあります。ここから順番に見ていきましょう。

    違い① お粥は米だけじゃない

    まずは、米を煮る三つの料理

    日本・佐賀のお茶がい(茶がゆ)は、番茶などで作った茶汁に米を入れて煮る料理です。タイのジョークも米を使いますが、こちらは米粒の形が分からなくなるほどやわらかく煮ます。同じタイのカオトムは逆に、米粒の形を残して仕上げます。

    どれも「米を煮る」というところまでは同じ。でも、何で煮るのか、どこまで粒を残すのか。そこが変わるだけで、一杯の姿はかなり変わります。

    米じゃない『お粥のような朝食』もある

    ここから少し面白くなります。

    中国・済南の甜沫(ティエンモー)では、粟などの穀物が使われます。スコットランドのポリッジはオーツ麦。ブラジルのミンガウ・デ・ミーリョは、とうもろこし。エジプトのベリラでは、全粒小麦をやわらかく煮て食べます。

    見た目だけなら、どれも「穀物をやわらかく煮た一杯」。でも、中身を見れば土台から違います。

    ブラジルのミンガウ・デ・ミーリョ。とうもろこしを使った黄色い粥状料理
    ミンガウ・デ・ミーリョ(ブラジル)|とうもろこしを使う粥状料理

    まず「何を煮ている?」と見るだけでも、お粥の世界はかなり広がります。

    違い② 粒を残す? それとも崩す?

    同じタイなのに、ジョークとカオトムはかなり違う

    いちばん分かりやすいのが、最初に登場したジョークとカオトムです。ジョークは、米粒の形がほとんど分からなくなるまで煮ます。一方のカオトムは、スープの中に米粒が見える仕上がりです。

    同じ国。同じ米。どちらも朝に食べられる一杯。

    それでも、粒をどこまで残すかで見た目と口当たりが変わります。「お粥」とひとことで呼ぶと近く見えても、実際に並べるとかなり違います。

    でも「粒が残る」だけでもまとめられない

    エジプトのベリラにも、粒があります。ただし残っているのは米粒ではありません。小麦の粒そのものです。

    さらに、インドネシア・マナドのティヌトゥアンは、米粒だけを見ても特徴をつかみきれません。とうもろこし、かぼちゃ、さつまいも、キャッサバ、葉野菜など、さまざまな材料が一緒になって一杯を作ります。

    つまり、「粒があるか、ないか」の二択ではありません。

    穀物の形が、一杯の中にどれくらい残って見えるのか。そう考える方が、それぞれの違いが見えやすくなります。

    違い③ お粥は淡白とは限らない

    「お粥」と聞くと、やさしい味や薄味を思い浮かべる人もいるかもしれません。でも、ここでも料理によってかなり違います。

    「甜」なのに甘くない、甜沫

    中国・済南の甜沫。

    名前にある「甜」は、「甘い」という意味を持つ字です。

    だったら甘いお粥を想像しそうですが、実際は塩味です。粟などの穀物に、ほうれん草、落花生、豆腐皮などを合わせ、しょうがやこしょうで風味をつけます。

    中国・済南の甜沫。穀物にほうれん草、落花生、豆腐皮などを合わせた塩味の粥状料理
    甜沫(中国・済南)|「甜」の字が入るものの、実際は塩味の一杯

    名前だけから想像した味とは、かなり違う一杯です。なお、なぜ「甜」という字を使う名前になったのかは、今回確認した資料だけでは確定しません。

    本当に甘い一杯もある

    一方、ブラジルのミンガウ・デ・ミーリョには、とうもろこしを牛乳などで煮、砂糖で甘く仕上げる例があります。エジプトのベリラでも、やわらかく煮た全粒小麦を牛乳や砂糖などと食べます。

    塩味の一杯もあれば、甘い一杯もある。使う穀物だけでなく、何を合わせるかでも印象は変わります。

    ポリッジは「甘い朝食」とも言い切れない

    スコットランドのポリッジは、オーツ麦を水や牛乳で煮て作ります。甘味を加えて食べることもありますが、塩味で食べる形もあります。

    「ポリッジ=甘い朝食」と一つに決めることもできません。香辛料、乳製品、砂糖。何を加えるかで、同じ「穀物を煮た一杯」でも味の方向は変わっていきます。

    違い④ 何を一緒に煮る? 何をあとから合わせる?

    次は、一杯の中身を見てみましょう。

    ジョークは、粥に具や薬味を合わせる

    タイのジョークでは、やわらかく煮た米粥に、肉や卵、しょうが、ねぎなどを合わせて一杯にします。

    やわらかな米粥が土台になり、その上に具や薬味が加わります。

    ティヌトゥアンは、野菜やいもまで一緒に煮る

    インドネシア・マナドのティヌトゥアンは、少し様子が違います。

    米だけを粥にして、最後に野菜をのせる料理ではありません。とうもろこし、かぼちゃ、さつまいも、キャッサバ、葉野菜なども加えながら煮ます。

    インドネシア・マナドのティヌトゥアン。野菜やいも類などを一緒に煮込んだ粥料理
    ティヌトゥアン(インドネシア・マナド)|野菜やいもまで一緒に煮込む一杯

    「お粥+野菜」ではなく、野菜やいもまで一杯そのものを作る材料。

    日本のお粥を思い浮かべていると、かなり違って見える一杯です。

    甜沫も「粟だけの粥」ではない

    甜沫にも、ほうれん草、落花生、豆腐皮などが入ります。

    こうして見ると、何を最後にのせるのか。何を最初から一緒に煮るのか。という違いも見えてきます。同じようなとろりとした一杯でも、「どう一杯を作っているか」は同じではありません。

    では、どこまでを「お粥」と呼ぶ?

    ここまで見てくると、別の疑問が出てきます。そもそも、どこまでを「お粥」と呼んでいいのでしょう。

    日本語の「粥」は、一般には、米などの穀物を多めの水分でやわらかく煮たものとして説明されます。米だけでなく、粟や麦などを使うものもあります。

    そう考えると、世界には「お粥に近い」と感じる料理がいくつもあります。
    たとえば南インドのヴェン・ポンガル。米とムング豆をやわらかく炊き、黒こしょうやクミン、ギーで風味をつける塩味の料理です。
    「ポンガル」という名も、タミル語の「煮る」「あふれる」に由来すると説明されています。

    見た目も作り方もお粥に近く感じられますが、少なくともインド政府の観光情報では、「お粥の一種」と明記するのではなく、ヴェン・ポンガルという固有の料理名で紹介されています。

    インドのヴェン・ポンガル。米と豆をやわらかく煮て仕上げた朝食料理
    ヴェン・ポンガル(インド)|お粥に近く見えても、固有の料理名を持つ一皿

    つまり、日本語ではお粥に近く見えても、現地では別の料理名と位置づけを持つことがあるということです。だから、世界の「お粥のような朝食」を見るときは、見た目だけでなく、材料や作り方、その土地でどう呼ばれているかまで見る必要があります。

    4つの「ものさし」で見ると、違いが見えてくる

    最初は、ジョークとカオトムの「粒が残るかどうか」から始まりました。でも8品を並べてみると、違いはそれだけではありませんでした。

    何を煮ている? 米だけでなく、粟、オーツ麦、とうもろこし、小麦もあります。

    粒をどこまで残す? ジョークのように崩す一杯もあれば、カオトムやベリラのように粒が見える料理もあります。

    どんな味にする? 塩味、香辛料のきいた味、牛乳や砂糖を使った甘い味まであります。

    何を一緒に入れる? 粥を土台に具を合わせる料理もあれば、ティヌトゥアンのように野菜やいもまで一緒に煮る料理もあります。同じように見える一杯でも、見る場所を少し変えるだけで違いが見えてきます。

    同じ「お粥」から、違う朝食が見えてくる

    最初に見たジョークとカオトムは、どちらも米が土台でした。でもそこから世界へ広げると、米ではない。甘い。香辛料がきいている。野菜やいもがたっぷり入る。そもそも「お粥」と呼んでいいのか迷う。そんな一杯まで出てきました。

    「世界のお粥」と一つにまとめるより、似て見える一杯の中に、どんな違いがあるのかを見る。

    その方が、料理一つひとつの面白さが見えてきます。

    気になった一杯を見てみよう

    世界の朝食をもっと大きく見渡すなら、「世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう」へ。

    世界の朝食を主食・食材から紹介する読み物
    世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう

    米、パン、麺、卵、豆、とうもろこし、キャッサバなど、世界の朝食を主食・食材から見渡します。

    記事を読む →

    主な参考資料

    • 農林水産省「お茶がい/茶がゆ 佐賀県」
    • タイ国政府観光庁「タイの食文化」
    • 済南市政府「A Bite of Jinan」
    • インドネシア共和国観光省「Tinutuan Porridge」
    • バイーア州政府 調達情報(朝食献立例)
    • VisitScotland「Must-try Scottish food and drink」
    • Egyptian Journal of Food Science「Production of Functional Egyptian Bellila with Probiotic Strains」
    • Indian Heritage Centre「What’s in the Pot?」
    • インド政府観光省 UTSAV「Pongal Festival」
    • コトバンク「粥」(デジタル大辞泉/精選版 日本国語大辞典)

    資料最終確認:2026年9月10日

  • 世界の朝食パンを比べてみよう

    世界の朝食パンを比べてみよう

    同じ小麦でも、作り方でこんなに変わる

    パンと聞くと、食パンやロールパンのような、ふくらんだ形を思い浮かべる人も多いかもしれません。

    ところが、トリシエタに掲載している朝食の小麦料理を並べてみると、輪状のパン、平たいパン、折り重ねた生地、具を包んだ生地、油で揚げた生地まであります。

    同じ小麦から始まるのに、なぜこんなに違う姿になるのでしょう。

    そこで今回は、小麦生地が料理になるまでの違いを見比べてみます。

    注目するのは、

    • 生地をどう扱うか
    • どう火を入れるか
    • どんな形や内部構造になるか

    という3つです。

    なお、ここでは一般的なパンだけでなく、油条やパートンコーのような小麦生地を揚げた朝食料理も一緒に見ます。

    最初からすべてを同じ「パン」と決めるのではなく、同じ小麦生地が、扱い方によってどう変わるのかを見ていきましょう。

    まずは8品をざっと見てみよう

    8品を並べると、同じ小麦から始まっても、輪にする、折る、包む、焼く、揚げるといった違いが見えてきます。

    料理国・地域今回注目するところ
    シミットトルコ輪状に成形して焼く
    エイシュ・バラディエジプト平たく焼き、中に空洞ができる
    ムスンメンモロッコ薄くのばして折り重ねる
    アルー・パラーターインドじゃがいもを包んで平たく焼く
    油条中国細長い小麦生地を揚げる
    パートンコータイ成形した小麦生地を揚げる
    ダンパーオーストラリア炭火やオーブンなどで焼く
    ソーダ・ファール北アイルランド重曹を使い、平たくして焼く

    違い① 生地をどう扱う?

    輪にする・平たくする・包む

    トルコのシミットは、糖蜜などを表面につけてゴマをまとわせ、輪状に成形して焼きます。

    エジプトのエイシュ・バラディは、丸い生地を平たくして高温で焼くパンです。

    インドのアルー・パラーターでは、香辛料で味付けしたじゃがいもを生地に包んでから平たく焼きます。

    完成した料理だけを見ると、どれも小麦を使った朝食です。

    でも、焼く前の段階ですでに、

    • 輪を作る。
    • 平たくする。
    • 具を包む。

    という違いがあります。

    同じ小麦生地でも、形を作る段階から別の料理への道が始まっています。

    折り重ねると、中の作りまで変わる

    モロッコのムスンメンは、生地を薄くのばして折り重ね、四角く成形します。

    単に平たくするだけではありません。

    折る工程によって、生地の中にも薄い重なりができます。

    モロッコのムスンメン。折り重ねた生地に薄い層ができる平たいパン
    ムスンメン(モロッコ)|折り重ねた生地に薄い層ができる

    つまり、外側の形を作る工程が、そのまま中の構造まで変えているのです。

    違い② 小麦生地は「焼く」とは限らない

    中国の油条とタイのパートンコー

    中国の油条は、小麦粉の生地を細長く伸ばして油で揚げる料理です。

    タイのパートンコーも、小麦生地を成形して油で揚げます。

    どちらも、パンのようにオーブンなどで焼くのではなく、油の中で加熱する小麦料理です。

    中国の油条。細長く伸ばした小麦生地を油で揚げた朝食料理
    油条(中国)|細長い小麦生地を油で揚げる朝食料理
    タイのパートンコー。成形した小麦生地を油で揚げた朝食料理
    パートンコー(タイ)|成形した小麦生地を揚げる朝食料理

    見た目や食感に似たところもあります。

    ただし、似ているからといって同じ料理ではありません。

    ここでは、どちらかの料理がもう一方から広まったのか、同じ起源を持つのかまでは結びつけず、「小麦生地を揚げる」という共通点に注目します。

    同じ「焼く」でも、火の入れ方は一つじゃない

    では、焼く料理なら同じなのでしょうか。

    北アイルランドのソーダ・ファールは、重曹で膨らませた生地を平たくし、鉄板やフライパンで焼きます。

    オーストラリアのダンパーには作り方の幅があり、炭火で焼く形も、オーブンで焼く形も見られます。

    つまり、「焼く」という一言の中にも、鉄板、フライパン、炭火、オーブンなどの違いがあるということです。

    火の入れ方が変われば、できあがる形や食感も変わってきます。

    違い③ 平たく見えても、中は同じじゃない

    エイシュ・バラディ、ムスンメン、アルー・パラーター。

    どれも外から見ると、平たい小麦料理です。

    でも、割ったりちぎったりして中を見ると、かなり違います。

    料理外から見た形中の特徴
    エイシュ・バラディ丸く平たい上下の層が分かれ、空洞ができる
    ムスンメン四角く平たい折り重ねた薄い層が現れる
    アルー・パラーター丸く平たいじゃがいもの具が包まれている

    外から見れば「平たいパン」。でも中を見ると、空洞、層、具入り。

    エジプトのエイシュ・バラディ。平たく焼かれ、中に空洞ができるパン
    エイシュ・バラディ(エジプト)|平たく焼き、中に空洞ができるパン

    丸いか四角いかだけでなく、断面まで見ると、作り方の違いがよりはっきり見えてきます。

    パンは、朝食でどう食べられている?

    ここまでは、小麦生地そのものを見てきました。

    では、朝食の中ではどう食べられているのでしょう。

    小麦生地だけで完結せず、粥や豆料理などと組み合わせて一食にする例もあります。

    中国・金郷では油条を粥に入れる

    中国・山東省金郷の白粥は、小米と大豆から作る地域の料理です。

    金郷県人民政府の紹介では、油条を小さくちぎって碗に入れ、その上から粥を注ぐ「粥泡油条」が伝統的な朝食の食べ方とされています。

    ここで紹介しているのは、中国全体ではなく金郷で確認できる地域例です。

    小麦生地を「横に添える」のではなく、粥の中へ入れて食べる形があるのです。

    タイではパートンコーとジョークを合わせる例も

    タイ保健省の資料では、パートンコーを食べる際に、ジョークやゆで卵などを組み合わせる案が示されています。

    ジョークは、米粒の形が分からなくなるほどやわらかく煮るタイの粥です。

    ただし、これは金郷の伝統的な食べ方と同じ種類の根拠ではなく、栄養面から示された組み合わせ例です。

    油条と粥。

    パートンコーとジョーク。

    どちらも揚げた小麦生地と粥を合わせていますが、この共通点だけから、同じ起源だったり、どちらかから広まったりしたと推測することはできません。

    エジプトではパンと豆料理が一緒に並ぶ

    エジプト観光・考古省の公式観光情報では、一日の始まりの食事として、フール・メダメスとエイシュ・バラディが一緒に紹介されています。

    フール・メダメスは、そら豆をやわらかく煮た料理です。

    エイシュ・バラディをちぎり、スプーンのように使って豆をすくう食べ方もあります。

    エジプトのエイシュ・バラディでフール・メダメスをすくって食べる朝食の組み合わせ
    エイシュ・バラディとフール・メダメス(エジプト)|パンで豆料理をすくって食べる組み合わせ

    日本では、豆料理はご飯などに添えるおかずとして思い浮かべる人も多いかもしれません。ところがエジプトでは、フール・メダメスのような豆料理も朝食の中心になり得ます。

    パンも豆料理も、それぞれ朝食の中心になれる存在が一緒に並び、組み合わさって一食を作る。そこに、日本とは少し違う朝ごはんの組み立て方が見えてきます。

    では、どこまでを「パン」と呼ぶ?

    ここまで、小麦生地を焼いた料理だけでなく、揚げた料理まで見てきました。

    では、小麦粉の生地を使っていれば、すべて「パン」と呼べるのでしょうか。

    一般的な小麦粉パンは、小麦粉に水などを加えて生地を作り、発酵させて焼くものとして説明されます。

    ただ、世界の小麦料理を見ると、この流れだけでは「パン」の境界をきれいに決められません。

    そのことが分かりやすいのが、蒸す料理です。

    中国の包子(バオズ)は、発酵させた小麦粉の生地で肉や野菜などの具を包み、焼くのではなく蒸して作ります。

    中国の包子。発酵させた小麦生地で具を包み、蒸して作る料理
    包子(中国)|発酵させた小麦生地で具を包み、蒸して作る料理

    日本では、包子につながる肉まんのような料理は、一般に「パン」よりも「中華まん」として扱われています。

    ところが、国際的な食品分類であるCodexでは、「Steamed breads and buns(蒸したパンとバンズ)」という区分があり、中国の具なしのものをmantou、具入りのものをbaozi/baoとして例示しています。

    つまり、日本では「中華まん」として馴染んでいる料理が、別の分類では「蒸したパン」の仲間として扱われることもある。

    材料や発酵の有無、焼くか蒸すかだけでは、「どこまでがパンか」を一つの線で決めるのは難しいのです。

    だから世界の小麦料理を見るときは、生地の扱い方や火の入れ方だけでなく、その土地でどう呼ばれているか、どんな料理として位置づけられているかまで見ると、違いがより分かりやすくなります。

    3つの視点で、同じ小麦の違いが見えてくる

    最初は、

    「同じ小麦なのに、なぜこんなに違う料理になるのだろう?」

    というところから始まりました。

    8品を見比べると、その違いは少しずつ見えてきます。

    生地をどう扱う? 輪にする、平たくする、折り重ねる、具を包む。

    どう火を入れる? 鉄板やフライパン、炭火、オーブン、揚げ油。

    中はどうなっている? 空洞ができる、層になる、具が入る。

    さらに朝食として見ると、小麦生地だけで完結せず、粥や豆料理と組み合わせる例もありました。

    そして「どこまでをパンと呼ぶか」まで考えると、似た生地でも、調理法や地域による呼ばれ方によって見え方が変わることも分かります。

    同じ小麦から始まっても、生地の扱い方、火の入れ方、できあがる構造、そして食卓での役割によって、まったく違う朝食になっていきます。

    気になった料理と読み物を見てみよう

    油条やパートンコーと組み合わせる粥が気になったら、「世界のお粥を比べてみよう|米粒が残る? とろりとする? 朝食の粥と粥状料理の違い」へ。

    世界のお粥を比べてみよう
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    米粒が残る? とろりとする? 穀物や作り方によって変わる、世界の朝食粥を見比べます。

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    米、パン、麺、卵、豆、とうもろこし、キャッサバ。世界の朝食を主食や食材から見渡します。

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    主な参考資料

    • GoTürkiye「10 Iconic Street Foods in Türkiye」
    • Experience Egypt「Gastronomy」
    • Taste of Maroc「Basic Msemen Recipe」
    • Incredible India「A gastronomic journey through must-try local foods in Chandigarh」
    • 済寧市人民政府「金郷白粥」
    • タイ保健省保健局「パートンコーの栄養価」
    • タイ国政府観光庁「パートンコー・ゴーネン」
    • SBS Food「Easy lemon myrtle damper」
    • Discover Northern Ireland「Unique Northern Ireland Foods」
    • Codex Alimentarius「Food Category 07.1.5 Steamed breads and buns」

    資料最終確認:2026年9月10日

  • アジアの朝食麺を比べてみよう

    アジアの朝食麺を比べてみよう

    スープだけじゃない 麺と汁やたれの合わせ方の違い

    朝ごはんに麺。
    日本でも、そばやうどん、ラーメンなどを朝に食べることはあります。

    朝の麺料理というと、フォーのようにスープに入った一杯を思い浮かべる人もいるかもしれません。

    ところが、トリシエタ掲載料理を見ていくと、汁を張らずにたれを絡める麺、汁ありと汁なしの両方がある麺、濃い汁を少量だけ合わせる麺、カレーやソースをかける麺まであります。

    そこで今回は、トリシエタ掲載料理のうち、朝食として食べられることを確認できたアジア4か国の麺料理を中心に、次の3つの視点から見比べます。

    • 麺そのものは何が違うのか
    • 汁やたれをどう合わせるのか
    • どこの街や地域の朝と結びついているのか

    ここでいう朝食麺は、朝にも食べられる麺料理を指します。朝だけに食べる料理という意味ではありません。

    まずは8品を見てみよう

    8品を並べると、同じ朝食麺でも、麺の原料や太さ、汁の量、たれとの合わせ方がかなり違うことが分かります。

    料理国・地域麺汁やたれとの合わせ方
    フォーベトナム平たい米麺スープに入れる
    熱乾麺中国・武漢小麦麺汁を張らず、芝麻醤などのたれを絡める
    フーティウベトナム南部米を原料とする細い麺汁ありと汁なしがある
    ミークアンベトナム・クアンナム周辺平たい米麺濃い汁を少量合わせる
    カノムチンタイ・特に南部細い米麺各種のカレーやソースをかける
    バインカンベトナム中部・南部米粉やタピオカ粉の太い麺具の入った汁と合わせる
    ミー・チェロールインドネシア・パレンバン太い小麦麺エビだしとココナッツミルクの濃い汁をかける
    長沙米粉中国・長沙米麺長沙の朝と結びつく一杯

    表を見ると、違うのは汁があるかないかだけではありません。
    麺の原料や太さ、汁の量、別添えにするかどうかまで変わります。

    違い① 麺そのものを見る

    同じ米麺でも、平たい・細い・太いがある

    ベトナムのフォーには、米から作る平たい麺が使われます。
    フーティウは、米を原料とする細い麺です。
    タイのカノムチンも細い米麺ですが、さまざまなカレーやソースを受け止める土台になります。
    一方、ベトナムのバインカンは、米粉やタピオカ粉から作る太い麺です。

    ひとことで「米麺」といっても、平たい、細い、太い、別のでんぷんを使うなど、実際の姿はかなり違います。

    「米麺」という言葉だけでは、その一杯の姿までは分からないのです。

    ベトナム南部のフーティウ。米を原料とする細い麺を使った麺料理
    フーティウ(ベトナム南部)|米を原料とする細い麺
    ベトナム中部・南部のバインカン。米粉やタピオカ粉を使った太い麺の料理
    バインカン(ベトナム中部・南部)|米粉やタピオカ粉を使う太い麺

    小麦麺にも違う形と作り方がある

    中国・武漢の熱乾麺には小麦麺が使われます。
    中国・蘭州の蘭州牛肉麺は、手で延ばした小麦麺を牛肉の澄んだスープに合わせる料理です。
    インドネシア・パレンバンのミー・チェロールには、太い小麦麺が使われます。

    米か小麦かを見るだけでも違いは見えます。でも、同じ原料の中でも形や太さ、作り方は変わります。
    では次に、その麺を汁やたれとどう合わせているのかを見てみましょう。

    違い② 汁やたれをどう合わせる?

    スープに麺を入れる フォー

    フォーは、平たい米麺を牛や鶏などのだしをきかせたスープで食べます。麺、スープ、肉や香草などの具が一つの器にまとまる、分かりやすい汁麺です。

    汁を張らずにたれを絡める 熱乾麺

    武漢の熱乾麺は、スープに麺を浸す料理ではありません。汁を張らず、芝麻醤やしょうゆなどを麺に絡めます。フォーと同じ朝食麺でも、麺と汁の関係はかなり違います。

    ベトナムのフォー。平たい米麺をスープに入れて食べる朝食麺
    フォー(ベトナム)|平たい米麺をスープに入れて食べる
    中国・武漢の熱乾麺。汁を張らず、たれを麺に絡めて食べる朝食麺
    熱乾麺(中国・武漢)|汁を張らず、たれを麺に絡める

    同じ料理に汁ありと汁なしがある フーティウ

    ベトナム南部のフーティウには、麺をスープに入れる形と、たれで和えた麺にスープを別添えする形があります。

    つまり、「この料理は汁あり」「この料理は汁なし」と料理名だけで二つに分けても、実際の食べ方までは捉えきれません。

    濃い汁を少量だけ合わせる ミークアン

    ベトナム中部のミークアンは、平たい米麺に風味の濃い肉の汁を少量合わせます。器いっぱいのスープに浸すフォーとも、汁を張らない熱乾麺とも違います。

    汁はある。でも、麺をスープに沈めるわけではない。
    そんな中間のような合わせ方もあります。

    カレーや濃い汁をかける カノムチンとミー・チェロール

    タイのカノムチンでは、細い米麺に魚や肉、ココナッツミルクなどを使った各種のカレーやソースをかけ、野菜や香草を添えます。

    パレンバンのミー・チェロールでは、太い小麦麺に、エビだしとココナッツミルクを合わせた濃い汁をかけます。

    二つは同じ料理ではありません。ただ、麺を土台にして、その上から汁やソースを合わせるという見方をすると、フォーのような汁麺とは違う姿が見えてきます。

    ベトナム中部のミークアン。平たい米麺に濃い汁を少量合わせる麺料理
    ミークアン(ベトナム・クアンナム周辺)|平たい米麺に濃い汁を少量合わせる
    インドネシア・パレンバンのミー・チェロール。太い小麦麺にエビだしとココナッツミルクの濃い汁をかける麺料理
    ミー・チェロール(インドネシア・パレンバン)|太い小麦麺にエビだしとココナッツミルクの濃い汁をかける

    朝食麺は、汁あり・汁なしだけではありません。

    麺と汁やたれを、どう一皿にまとめるのか。
    そこを見ると、違いがより分かりやすくなります。

    違い③ 「中国の朝食麺」ではなく、街ごとの朝を見る

    ここまでは、麺そのものや汁との合わせ方を見てきました。でも、もう一つ見ておきたいことがあります。

    その一杯が、どこの朝と結びついているのか。

    「中国では朝に麺を食べる」とひとまとめにすると、見えなくなる違いがあります。

    武漢、長沙、常徳、蘭州。トリシエタで確認できた例だけでも、朝と結びつく麺料理は街によって異なります。

    武漢では熱乾麺

    中国・武漢では、朝食をとることを「過早」と呼ぶ食文化が知られています。

    熱乾麺は、その代表的な料理として紹介されています。

    汁を張らずにたれを絡めるという特徴だけでなく、武漢の朝と結びついた一杯です。

    長沙と常徳では米粉

    長沙では、米粉が朝食として親しまれています。

    常徳でも、熱い米粉が多くの住民の朝食として選ばれていると公的資料が伝えています。

    どちらも米粉ですが、それぞれの街の朝に結びついた食べ物として親しまれています。

    蘭州では牛肉麺

    蘭州では、牛肉麺を朝に食べる習慣が紹介されています。

    手で延ばした小麦麺を、牛肉の澄んだスープ、大根、辣油、香菜などと合わせる一杯です。

    武漢では熱乾麺、長沙や常徳では米粉、蘭州では牛肉麺。
    同じ中国でも、朝の一杯は街によって違います。

    「中国では朝に何の麺を食べる?」だけではなく、「どの街の朝を見る?」。
    国より一段細かく見てみると、その土地らしい朝の麺が見えてきます。

    3つの視点で、朝食麺の違いが見えてくる

    最初は、「アジアでは朝にどんな麺を食べているんだろう?」というところから始まりました。

    ところが並べてみると、同じ「朝の麺」でも、その姿はかなり違います。

    麺そのものも違えば、汁やたれとの合わせ方も違い、さらに街ごとに朝と結びつく一杯も違っていました。

    麺そのものは?
    米麺と小麦麺があり、同じ米麺でも平たい、細い、太いと形が変わります。
    汁やたれは?
    スープに浸す、たれを絡める、汁を別添えする、少量だけ合わせる、カレーや濃い汁をかける。
    どこの朝なのか?
    同じ国でも、街ごとに朝と結びつく一杯が違います。

    つまり、

    何の麺を、どんな汁やたれと、どこの朝に食べるのか。

    そこまで見ると、似て見えた朝食麺の違いが、かなりはっきりしてきます。

    気になった一杯を見てみよう

    世界の朝食全体を見渡すなら、「世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう」へ。

    世界の朝食を主食・食材から紹介する読み物
    世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう

    米、パン、麺、卵、豆など、世界の朝食を主食・食材から大きく見渡します。

    記事を読む →

    同じ米から生まれる別の朝食が気になったら、「世界のお粥を比べてみよう|米粒が残る? とろりとする? 朝食の粥と粥状料理の違い」へ。

    世界のお粥を比較する読み物
    世界のお粥を比べてみよう

    米粒が残るもの、とろりと煮るもの。世界の朝食粥と粥状料理の違いを比べます。

    記事を読む →

    主な参考資料

    • 武漢市人民政府「武漢過早文化」
    • 武漢市人民政府「武漢熱乾麺 一 碗煙火気 幾多江湖情」
    • 湖南省市場監督管理局「守護舌尖上的安全 “ ” 長沙創新 四心 工作法」
    • 湖南省商務庁「常徳米粉被列入省級非物質文化遺産代表性項目名録」
    • 甘粛省商務庁「奔赴山海世界 从絲路煙火到全球餐桌的蘭州牛肉面之旅」
    • Vietnam Tourism「21 must-try Vietnamese dishes」
    • Vietnam Tourism「A foodie guide to Vietnam’s noodles」
    • Vietnam Tourism「Ho Chi Minh City Cuisine From Street Eats to Fine Dining」
    • タイ国政府観光庁「3 Days in Nakhon Si Thammarat Beyond the Sea」
    • Indonesia Travel「10 Makanan Khas Palembang yang Mengguggah Selera」

    資料最終確認:2026年9月10日

  • 朝食の卵はどう食べる?

    朝食の卵はどう食べる?

    主役にも、名バイプレイヤーにもなる卵料理

    卵は、日本でも朝食で身近な食材です。

    卵焼き、目玉焼き、ゆで卵。

    同じ卵でも、作り方や食べ方はさまざまです。

    でも、トリシエタの掲載料理を並べてみると、違いはそれだけではありません。

    生卵をご飯そのものに合わせる料理、トルティーヤやソースと一皿にする料理、パンに挟む料理もあれば、パンを半熟卵へ浸して食べる料理もあります。

    さらに見ていくと、身近な感覚では少し意外な食材を卵と組み合わせる朝食まであります。

    こうして見ると、卵料理の違いは、作り方だけでなく、何と組み合わさり、一皿の中でどんな役を担うのかにも表れています。

    そこで今回は、その違いに注目して見比べてみます。

    今回見る料理

    まずは、卵と周りの食材との関係が見えやすい8品を並べてみます。

    料理国・地域今回注目するところ
    卵かけご飯日本生卵をご飯そのものに合わせる
    メネメントルコ野菜へ卵を加え、混ぜる形と残す形がある
    シャクシュカエジプトトマトなどのソースへ卵を落として火を通す
    ウエボス・ランチェロスメキシコトルティーヤ、卵、ソースを組み合わせる
    エッグ・アンド・ソルジャーズイギリス細長いトーストを半熟卵へ浸す
    ベーコン・アンド・エッグ・ロールオーストラリア卵とベーコンをパンに挟む
    カヴルマル・ユムルタトルコ・エラズー保存肉と卵を合わせる
    ペスティルリ・ユムルタトルコ・エラズー果物由来の保存食と卵を合わせる

    卵を混ぜる? 形を残す?

    トルコのメネメンとエジプトのシャクシュカには、卵とトマト系の食材を一皿にするという共通点があります。

    シャクシュカは、トマトや玉ねぎ、ピーマンなどのソースへ卵を落とし、卵の形を残して火を通す料理として紹介されています。

    メネメンは、トマトや青唐辛子などへ卵を加えて作ります。

    エジプトのシャクシュカ。トマト系のソースに卵を落とし、形を残して火を通した卵料理
    シャクシュカ(エジプト)|トマト系のソースに卵を落とし、形を残して火を通す
    トルコのメネメン。トマトや青唐辛子などに卵を加えて作る卵料理
    メネメン(トルコ)|トマトや青唐辛子などに卵を加えて作る

    ただし、卵を混ぜて野菜となじませる形だけではありません。

    トルコ文化観光省のレシピには、野菜の中にくぼみを作って卵を落とす方法と、卵を混ぜる場合の両方が示されています。

    そのため、二品を
    「メネメンは混ぜる」
    「シャクシュカは形を残す」
    と、きれいに分けることはできません。

    同じように卵とトマト系の食材を使っていても、卵をどう一皿へ組み込むかで仕上がりには幅があります。

    料理名だけで、卵の形や仕上がりを一つに決めることはできないのです。

    卵は朝食の名バイプレイヤーにもなる

    卵は、ご飯に絡んだり、トルティーヤやソースと一皿を作ったり、パンに挟まれたり、ときにはパンを受け止めたりします。

    ご飯そのものと一体になる

    日本の卵かけご飯では、生卵をご飯に直接合わせます。

    卵料理をご飯の横へ置くのではなく、ご飯そのものに絡めて食べる朝食です。

    トルティーヤ、卵、ソースで一皿を作る

    メキシコのウエボス・ランチェロスでは、トルティーヤに卵をのせ、トマトやチリを使ったソースを合わせます。

    主食、卵、ソースが重なって、一皿の朝食になります。

    パンに挟まれる

    オーストラリアのベーコン・アンド・エッグ・ロールでは、焼いた卵とベーコンをパンに挟みます。

    卵とベーコンが、パンの中にまとまった一食になります。

    オーストラリアのベーコン・アンド・エッグ・ロール。焼いた卵とベーコンをパンに挟んだ朝食料理
    ベーコン・アンド・エッグ・ロール(オーストラリア)|卵とベーコンをパンに挟む
    イギリスのエッグ・アンド・ソルジャーズ。細長く切ったトーストを半熟卵に浸して食べる朝食料理
    エッグ・アンド・ソルジャーズ(イギリス)|細長いトーストを半熟卵へ浸して食べる

    パンを受け止める

    イギリスのエッグ・アンド・ソルジャーズでは、半熟のゆで卵へ細長く切ったトーストを浸して食べます。

    先ほどは卵がパンの中へ入りました。

    今度は、パンの方が卵へ入ります。

    同じ卵とパンでも、組み合わせる向きが逆になると、食べ方まで変わります。

    卵は、ご飯に絡み、トルティーヤやソースと一皿を作り、パンに挟まれ、ときにはパンを受け止める側にもなります。

    卵そのものは同じでも、朝食の中での役回りは一つではありません。

    卵の相手は肉や野菜だけじゃない

    トリシエタには、保存・加工した肉と卵を組み合わせる料理が複数あります。

    メキシコ北部の乾燥牛肉マチャカ、モロッコの保存肉フリイ、エジプトのバストルマ、トルコ・エラズーのカヴルマです。

    保存の方法は異なりますが、いずれも肉を卵と合わせる朝食料理が確認できます。

    肉と卵の組み合わせ自体は、ベーコンやソーセージと卵を思い浮かべると、比較的想像しやすいかもしれません。

    ところが、同じエラズーには、肉とはまったく違う保存食を卵と合わせる料理があります。

    果物から作る保存食も卵の相手になる

    ペスティルリ・ユムルタです。

    ペスティルは、果物を煮詰めて薄くのばし、乾燥させて作る保存食です。

    エラズー県文化観光局の資料では、夏の終わりになると冬支度として、ペスティルやカヴルマなどの食品を作って保存することが紹介されています。さらに冬の朝食には、カヴルマル・ユムルタとペスティルリ・ユムルタの両方が並べられています。

    ペスティルリ・ユムルタは、トルコ文化観光省のエラズー紹介資料では、乾燥させた果物のシート状の食品を細かくし、バターとともに調理した卵料理として紹介されています。

    つまり、同じ地域の冬の朝食に、
    保存肉と卵。
    果物由来の保存食と卵。
    という二つの組み合わせが見られるのです。

    トルコ・エラズーのカヴルマル・ユムルタ。保存肉のカヴルマと卵を合わせた朝食料理
    カヴルマル・ユムルタ(トルコ・エラズー)|保存肉のカヴルマと卵を合わせる
    トルコ・エラズーのペスティルリ・ユムルタ。果物由来の保存食ペスティルと卵を合わせた朝食料理
    ペスティルリ・ユムルタ(トルコ・エラズー)|果物由来の保存食ペスティルと卵を合わせる

    肉の保存食と卵なら、身近な朝食からも想像しやすいかもしれません。

    でも、果物から作る保存食まで卵の相手になるとなると、卵の組み合わせの広さが一段違って見えてきます。

    エラズーの食文化は、季節やその土地で得られる食材に応じて形づくられてきたと公的資料でも説明されていて、ペスティルも冬に備えて保存される食品の一つです。

    ただし、今回確認した資料では、なぜペスティルを卵と合わせる料理が生まれたのか、その成立理由までは説明されていません。

    「冬の保存食だったから卵と合わせるようになった」とまで結びつけるのは、現時点では推測になります。

    卵料理を調理法だけで見るともったいない

    朝食の卵料理には、焼く、茹でる、混ぜるといった調理法の違いがあります。

    でも、それだけで整理すると、卵と周りの食材との関係がこぼれてしまいます。

    卵は主役になりながら、野菜やソースへの入り方を変えます。

    ご飯そのものに絡み、トルティーヤやソースと一皿を作り、パンに挟まれ、今度はパンを浸して食べる相手にもなります。

    そして、組み合わせる相手は肉や野菜だけではありません。

    果物から作る保存食まで、卵の相手になる例がありました。

    卵をどう調理するかだけでなく、何と組み合わせて、どんな一食にしているのかまで見てみる。

    そうすると、同じ卵でも、何と組み合わせるかによって朝食の姿が大きく変わることが見えてきます。

    気になった料理を見てみよう

    世界の朝食全体を見渡すなら、「世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう」へ。

    世界の朝食を主食・食材から紹介する読み物
    世界では朝ごはんに何を食べる? 世界の朝食を主食・食材から見てみよう

    米、パン、麺、卵、豆など、世界の朝食を主食・食材から大きく見渡します。

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    卵とパンの関係から小麦料理の違いも気になったら、「世界の朝食パンを比べてみよう」へ。

    世界の朝食パンと小麦料理を比較する読み物
    世界の朝食パンを比べてみよう

    同じ小麦でも、作り方でこんなに変わる。生地の扱い方や火の入れ方の違いを見比べます。

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    主な参考資料

    • 農林水産省「めざましごはん」
    • トルコ文化観光省「Egg With Vegetables」
    • エラズー県文化観光局「Geleneksel Mutfak Kültürü」
    • エラズー県文化観光局「Elazığ-Harput Mutfağı」
    • トルコ文化観光省「Elazığ」英語版紹介資料
    • メキシコ農業・農村開発省「Celebra la versatilidad y sabor del huevo」
    • Tourism Australia「The best Australian foods to try」
    • Hovis「Boiled Eggs and Soldiers」
    • WIPO「Scoping Study on the Protection of Geographical Indications in Morocco」
    • Ahram Gate「シャクシュカ紹介記事」
    • Ahram Gate「卵とバストルマの朝食料理紹介」

    資料最終確認:2026年9月10日

  • 世界では朝ごはんに何を食べる?

    世界では朝ごはんに何を食べる?

    世界の朝食を主食・食材から見てみよう

    朝ごはんと聞くと、ご飯やパン、卵料理を思い浮かべる人も多いかもしれません。
    でも世界の朝食を見てみると、お粥や麺、豆料理、とうもろこし、タピオカの原料にもなるキャッサバなど、料理の姿はさまざまです。

    面白いのは、同じ食材でも、料理になるとまるで違う姿になること。
    米は、ご飯だけでなく、お粥や麺、薄い生地になります。
    小麦も、ふくらんだパン、平たいパン、層のある生地、揚げた生地へと姿を変えます。

    「どの国で何を食べる?」だけでなく、
    同じ食材が、どんな料理になっているのか。
    そんなところから、世界の朝ごはんを見てみましょう。

    世界の朝ごはんを、食材から見てみる

    国ではなく「何を使っているか」で並べてみると、違いが見えやすくなります。

    注目する食材・料理朝食で見られる姿
    米ご飯、お粥、麺、米粉の生地
    小麦・パン発酵パン、平焼きパン、層のある生地、揚げ生地
    麺米麺、小麦麺、スープ・たれ・別添えなど
    卵ご飯やパン、野菜、ソースなどと組み合わせる
    豆発酵させる、煮る、つぶす、揚げる
    とうもろこし粉や生地にする、蒸す
    キャッサバ根を茹でる、でんぷんを取り出して生地にする

    まずは、身近な米から見てみましょう。

    米の朝ごはん、ご飯だけじゃない

    日本では、炊いたご飯だけでなく、お粥も朝食として親しまれています。
    世界に目を向けると、同じ「米を煮る」料理でも、仕上がりはかなり違います。

    タイには、米粒が分からなくなるほどやわらかく煮るジョークと、米粒の形を残して仕上げるカオトムがあります。
    同じ米を使った一杯でも、粒をどこまで残すかで見た目や口当たりが変わります。

    タイの米粥ジョーク。米粒が崩れてなめらかに煮込まれた朝食粥
    ジョーク
    タイの米粥カオトム。米粒の形を残して仕上げた朝食粥
    カオトム

    さらに、米は煮るだけではありません。
    ベトナムのバインクオンは、米粉の生地を薄く蒸し、具を包んで食べる料理です。

    粒のまま食べる → 煮る → 粉にして生地にする
    と、姿は大きく変わります。

    では、「お粥のような朝食」だけを世界から集めてみると、違いは粒の残り方だけなのでしょうか。

    世界のお粥を比べてみよう
    世界のお粥を比べてみよう

    米粒の残り方だけでなく、穀物・味・具の違いまで見比べます。

    記事を読む →

    パンの形は、こんなに違う

    パンと聞くと、ふくらんだ生地を思い浮かべるかもしれません。
    でも朝食では、平たく焼く、層を重ねる、揚げるなど、同じ小麦でも姿がかなり変わります。

    トルコのシミットは輪の形をした生地にごまをまぶしたパン、エジプトのエイシュ・バラディは中が空洞になりやすい平たいパンです。
    モロッコのムスンメンは薄い生地を折り重ねて焼き、トルコのピシは生地を揚げてふくらませます。

    トルコのパン、シミット。ごまをまぶした輪形のパン
    シミット
    エジプトの平たいパン、エイシュ・バラディ
    エイシュ・バラディ
    モロッコの折り重ねた四角いパン、ムスンメン
    ムスンメン
    トルコの揚げパン、ピシ。ふくらんだ丸い形のパン
    ピシ

    輪にする・平たくする・折り重ねる・揚げる
    と、同じ小麦でも形や食感の方向が大きく変わります。

    さらに、「どこまでをパンと呼ぶのか」まで見ていくと、その違いはもっと深くなります。

    世界の朝食パンを比べてみよう
    世界の朝食パンを比べてみよう

    同じ小麦でも、生地の扱い方や火の入れ方で、朝食パンの姿は大きく変わります。

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    朝ごはんの麺は、スープだけじゃない

    アジアの朝食麺を見てみると、同じ麺料理でも、汁やたれとの合わせ方はかなり違います。

    ベトナムのフォーは、平たい米麺を温かいスープで食べる料理です。
    同じベトナムのフーティウには、スープに入れる形だけでなく、麺をたれで和え、スープを別に添える形もあります。
    インドネシアのミー・チェロールは、太い小麦麺にエビだしとココナッツミルクを使った濃い汁を合わせます。

    麺そのものが違う。
    汁やたれとの合わせ方が違う。
    どの街や地域の朝と結びついているのかも違う。

    スープに入れる、たれを絡める、汁を別に添える。朝食麺を並べると、「汁あり・汁なし」だけでは分けきれない違いが見えてきます。

    アジアの朝食麺を比べてみよう
    アジアの朝食麺を比べてみよう

    スープ、たれ、別添え、少量の汁。麺と汁の合わせ方の違いを見比べます。

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    卵は、朝食の中でどんな役をする?

    卵は、日本でも朝食で身近な食材です。
    だからこそ、世界の卵料理を並べると、調理法だけでは見えない違いが出てきます。

    日本の卵焼きは、溶いた卵を味付けして焼き、巻きながら形を整える料理です。
    トルコのメネメンでは、トマトや青唐辛子などと卵を一緒に調理します。
    メキシコのウエボス・ランチェロスでは、卵にトルティーヤやソースを組み合わせ、一皿の朝食にします。

    同じ卵でも、何と組み合わさり、一皿の中でどんな役をするかが変わります。

    卵を何と組み合わせ、どんな一食にしているのかまで見ると、どんな違いが見えてくるのでしょう。

    朝食の卵はどう食べる?
    朝食の卵はどう食べる?

    ご飯に絡む、パンに挟む、ソースと一皿にする。卵の“役回り”の違いを見ていきます。

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    豆が朝ごはんの中心になる

    豆というと、副菜を思い浮かべる人もいるかもしれません。
    でも、豆そのものが朝食の中心になる料理もあります。

    日本の納豆は、発酵させた大豆を食べる身近な朝食の一つです。
    エジプトのフール・メダメスでは、そら豆をやわらかく煮て食べます。
    同じエジプトのターメイヤは、そら豆をつぶして形を整え、揚げて作る料理です。

    エジプトの豆料理フール・メダメス。そら豆をやわらかく煮た料理
    フール・メダメス
    エジプトの豆料理ターメイヤ。そら豆をつぶして揚げた料理
    ターメイヤ

    発酵させる → 煮る → つぶして揚げる
    と、まったく違う料理になります。

    さらに、フール・メダメスやターメイヤを、エイシュ・バラディなどのパンと組み合わせて朝食にする例もあります。
    豆は添え物になるだけでなく、一食の中心になる料理にもなるのです。

    米や小麦だけじゃない。とうもろこしとキャッサバ

    メキシコのタマレスでは、とうもろこしを生地にし、具を合わせて葉で包み、蒸して作ります。
    ブラジルのクスクス・デ・ミーリョでは、とうもろこしの粉を蒸して食べます。
    同じとうもろこしでも、生地にするか、粉を蒸すかで料理の姿が変わります。

    さらにブラジルでは、キャッサバも朝食に登場します。
    キャッサバは、タピオカの原料として知っている人もいるかもしれません。

    マンジョッカ・コジーダは、キャッサバの根をやわらかく茹でて食べる料理です。
    一方、タピオカでは、キャッサバから取り出したでんぷんを湿らせ、薄い生地のように焼いて使います。

    ブラジルのマンジョッカ・コジーダ。キャッサバの根をやわらかく茹でた料理
    マンジョッカ・コジーダ
    ブラジルのタピオカ。キャッサバでんぷんを焼いて半月形に仕上げた料理
    タピオカ

    根そのものを食べる → でんぷんを取り出して別の料理にする
    という、かなり違う姿があります。

    朝ごはんは、一食のまとまり方も違う

    料理を一品ずつ見るだけでは、一食としてどう食べられるのかまでは分かりません。

    メキシコのウエボス・ランチェロスは、卵・トルティーヤ・ソースが一皿にまとまります。
    エジプトでは、豆料理とパンを組み合わせて食べる例があります。
    フォーは、麺・スープ・具が一つの器にまとまる料理です。

    一皿に重ねる。
    いくつかの料理を組み合わせる。
    一つの器の中でまとめる。

    料理そのものだけでなく、どう一食として組み合わされているのか。
    そこまで見ると、料理名だけでは見えにくかった違いが見えてきます。

    違う食材なのに、似たところもある

    ここまでの料理を横に並べると、別の食材なのに似たところも見えてきます。

    米は、粉にして麺や生地になります。とうもろこしやキャッサバも、粉やでんぷんにすることで、元の姿とは違う料理になります。
    小麦でも、生地を平たくしたり、折り重ねたり、揚げたりして、さまざまな料理が作られます。

    材料は違っても、「どう姿を変えるか」に目を向けると、料理同士に思わぬ共通点が見つかることがあります。

    ただし、作り方が似ているからといって、同じ文化や同じ理由から生まれたとは限りません。

    「○○国の朝食はこれ」と一つには決められない

    トリシエタに掲載している料理だけを見ても、同じ国の中にいくつもの朝食があります。
    タイには、ジョークやカオトム。
    ベトナムには、フォー、バインクオン、フーティウなど。
    ブラジルにも、クスクス・デ・ミーリョ、マンジョッカ・コジーダ、タピオカなどがあります。

    しかも違うのは料理名だけではありません。
    使う食材も、加工のしかたも、一食のまとまり方も、地域との結びつきも違います。

    何を使う?
    どう加工する?
    どう調理する?
    何と組み合わせる?
    どの国・地域で食べられている?

    と見ていくと、朝食の違いが見えやすくなります。

    でも、見方はそれだけではありません。
    国から見てもいい。
    食材から見てもいい。
    似ている料理をたどってもいい。
    気になった一品から、別の国へ広がっていってもいい。

    世界の朝ごはんには、いろいろな入り口があります。

    気になったところから、もう少し見てみよう

    ここまででも、
    同じお粥のような一杯でも、粒の残り方だけでは違いを説明し切れない。
    同じ小麦でも、輪にしたり、平たくしたり、折り重ねたり、揚げたりする。
    朝食の麺は、スープに入れるだけではなく、汁やたれとの合わせ方にも幅がある。
    卵は、調理法だけでなく、何と組み合わせてどんな一食にするかでも姿が変わる。

    といった違いが見えてきました。
    気になったテーマがあれば、そこからもう少し深く見てみてください。

    気になった一皿から、次の料理へ。
    世界の朝ごはんをたどっていくと、思わぬところで似ていたり、同じように見えてまったく違ったりします。